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弁護団長・原告団長あいさつ
全国B型肝炎訴訟弁護団連絡会
代表 弁護士 佐藤哲之(札幌弁護士会所属)
今年は私たち全国弁護団・原告団が国(厚生労働大臣)と基本合意を締結して10年という節目の年です。(先行訴訟の提訴から33年、最高裁判決から15年でもあります。)
先行訴訟からの歩みを振り返ると、私たちは、ウイルス性肝炎患者の運動の歴史に、被害者が国の加害責任を明らかにし、被害回復を求めるという被害者運動というページを書き加えることで、肝炎対策が国の義務、責務であることを明らかにし、理論的にも、実践的にも、新たな地平を切り拓くことができました。
私たちは、この10年間の取り組みで、基本合意で確認された個別被害回復、恒久対策、真相究明・再発防止の3つないし教育・啓発を加えて4つの分野で大変大きな成果をあげてきました。
例えば、個別被害回復では、提訴者数8万0000人(そのうち、私たちの原告団は3万0000人)を超えています。恒久対策では、個別患者対応(医療費助成)が感染拡大防止、重症化防止ということから、「国の責任」を曖昧にしては実現できなかった重症者支援、「肝がん、重度肝硬変」患者への医療費助成を、必ずしも十分なものではありませんが、実現するに至っています。創薬も前進しています。真相究明・再発防止では、私たちの立場で真相究明を深化させるとともに歯科医療における再発防止の取組みが大きく前進しています。教育・啓発では、患者講義や偏見・差別解消の取り組みだけでなく、副読本「いのちの教育」の完成・普及、B肝被害と回復の取り組みの教科書掲載によりこの課題を次世代につなぐ成果も生み出しています。
私たちは、被害者原告のみなさんと共に、そして、より多くの方々とも協力しながら、肝炎患者のみなさんが安心して治療を受け、人生を全うできる社会(初代原告団代表の谷口さんの言葉を借りれば「私たちはB型肝炎患者ですと大きな声で言える社会」)、更には、B型肝炎を治る病気にすることを展望して活動を続けています。
私たちは、すべての国民が検査を受け、1人でも多くの被害者のみなさんが声をあげ、私たちと一緒にすべてのウイルス性肝炎患者のためにいろいろな課題に取り組むことを訴えるものです。
(2021年3月31日執筆)
全国B型肝炎訴訟原告団
代表 田中義信
2008年から全国B型肝炎訴訟が始まりましたが、当初、私には関係ないことと思っていました。ところが、2008年12月の健康診断の結果、翌2009年1月に肝臓がんがわかりました。
医者からは5年の生存率は50%、10年の生存率は10%と宣告され、肉体的にも経済的にもボロボロ、生きる希望も失いそうになりながら、闘病生活を送っていました。
そうした状況にあった2009年4月に、この訴訟に自分も加わることができるのではないかと思い連絡をしたのが原告団に入るきっかけです。
全国B型肝炎訴訟原告団の代表は、2013年6月に谷口三枝子さんから引き継ぎました。
私たち原告・被害者は、集団予防接種等で注射器の連続使用により約45万人の感染被害が生じ、長い間にわたり肉体的、精神的苦痛を受けました。また、感染症による不当な偏見・差別や、経済的負担を余儀なくされました。
2011年6月28日、国と全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団が和解し基本合意を締結しました。その概要は、国が「B型肝炎ウイルスに感染した被害者の方々に甚大な被害を生じさせ、その被害の拡大を防止しなかったことについて責任を認め、感染被害者及びその遺族の方々に心から謝罪」(基本合意書)し、被害者に損害賠償金を支払うことになったのです。
また、その際にこの被害の真相究明、再発防止、不当な差別や偏見を受けることがないように教育啓発活動や医療費助成・肝炎医療の推進などの恒久対策を行うことを取り決め、その活動を国とともに進めています。
今年、2021年はその基本合意からちょうど10周年となりました。
さらに、2021年4月、最高裁判所で、慢性肝炎再発の事案に関し、除斥期間の起算点を再発時とする判決が言い渡されました。被害に応じた公平・公正な救済を求めた判決で正義にかなうものでした。原告団・弁護団は、除斥を理由に不当に差のある対応をされている被害者が、広く公平・公正に救済されるよう全力を尽して活動しています。
悲惨な経験をした私たちの願いは、被害者全員の一日も早い救済、全てのウイルス性肝炎患者のための恒久対策の推進、真相究明・再発防止など、この悲劇を二度と繰り返さないこと、ひとびとが私たちのような苦しみを味わうことのない世の中にすることです。
被害者のみなさん、これからも活動していく私達の原告団・弁護団に、ぜひご参加ください!
(2021年7月19日執筆)